賃貸VS分譲。家を買うのと借りるのどっちがお得かを考える

 

こんにちは。「損をしない家の買い方を世の中に広めたい、リノベーションの人」

(株)カラフルライフの清水 透です。

 

今日は「賃貸VS分譲。家を買うのと借りるのどっちがお得かを考える」をお伝えします。

 

現SUUMO、旧住宅情報時代から、毎年一回くらい特集される住宅業界永遠のテーマ。結論は「人と場所と時代によって違うから一概に言えない」に決まってると私は思っているのですが、それでもいざ買おうというと「このまま賃貸でも…」という考えが浮かぶのでしょうね。私なりに考えるこのテーマについて書いてみます。

 

 

本記事のテーマ

家は賃貸か持ち家か。どっちがお得なのかを考える。

内容:
➀「人と場所と時代によって違うから、一概に言えない」が結論1です
➁賃貸を分譲マンションに変更。予想通りに問題頻発
➂みんな意外と言わない賃貸と分譲の“住み心地”の違い
➃昭和高度成長期から令和への変化。「みんな一緒に」から「それぞれ別々」に
⑤住宅購入を機に迷いましょう。「あなたが出した答えが正解」が結論2です

 

私の略歴です。不動産仲介業、販売受託業、リフォーム・リノベーション業を、個人住宅でのみ、大学を卒業してから20余年、やって参りました。

□不動産仲介業、新築マンション販売を約10年経験
□トップセールスとして関西の中堅リノベーション会社のスタートアップを経験
□数年に渡り某新聞の不動産コラムを担当
□最前線で150現場以上のリノベーションを担当

賃貸、投資物件、商業ビルについてはほぼ未経験です。今回の記事を書く私のバックグラウンドは「不動産業とリフォーム業をがっちりやってきた人」の一意見であるということを念頭にお読みください。賃貸不動産営業の方、金融や投資方面の方は、また違う視点をお持ちだと思います。

 

「人と場所と時代によって違うから、一概に言えない」が結論です

「どうしてもお金の損をしたくないんです」とお客様から相談電話を受けたのは、今から15年ほど前。税金の支払い、ローン金利、値下がりなどなど、不安定要素の塊の現代の住宅事情の中、「損をしない買い方がしたい」。あなたならどう答えますか??

当時20代後半だった私は「お金“だけ”について損をしたくない、という意味でしたら、文化住宅などの地域最安値の賃貸住宅がベストだと思います」と答えました。紆余曲折を経て最終的には宝塚市で3,500万円の新築戸建をご購入いただきました。

家に何を求めるかにより、10人100通りにお答えできる問いですが、ご主人は神戸北部の大企業の工場に定年まで勤務予定で、ご夫婦ともに関西に実家がある。お子様2人。私の価値観として、このご夫婦にとってはお子様2人が巣立つまでが人生のプライムタイムであり、「その間のご家族にとってベストの買い方」をしていただいたつもりです。

 

賃貸が得か持ち家が得かの問いは、「人と場所と時代によって違うから、一概に言えない」が結論です。そう言ってしまうと身も蓋も無いので、どの記事でも論点整理しています。

一般的なメリットデメリットを大づかみにしておくと、「年を取ってから賃貸物件は貸してもらえない可能性がある」がよく言われます。後期高齢者になった時に住むところがない恐怖感は、確かに人を追い立てるものがあります。ただ、人口減少家余りもあり、だいぶ解消されているようです。実家があるならそこに戻る手もありますが、高齢者になってから半世紀ぶりに実家に帰って元の生活…、というのは私はハードルが高いと思います。

賃貸は払い終わっても自分のものにならないが、持ち家は資産になる。というのは代表的な持ち家志向側の主張でしょうか。いまだにこの論が闊歩しているのは不思議です。2030年に日本の家の3分の1が空き家になろうかと言われている今の時代に、それは逆です。どちらかと言えば、持ち家は資産よりも負債になる可能性の方がむしろ高いと考えます。だからこそ少なくともマイナス幅を抑える持ち方を考えなければいけないと私は思っています。

 

参考までに私個人にとっての住宅を持つメリットをまとめると:

➀団体生命保険への加入により、死んでも家族に家が残ることで、生命保険がほぼ不要になる。

②住み心地が良い:賃貸より分譲マンションの方が、建物の強度が高いことが圧倒的に多く、良いコミュニティを一緒に作ろうとしている住民も多い傾向にある。そのような環境の整った賃貸物件に入るよりは買った方が毎月の支払いは安い。

➂後の資産としては当てにならなくとも、「住むところが無い」状態にならないため安心材料になる。

の3つです。あなたが持ち家を持つなら、その理由はなんでしょうか??

 

社宅を分譲マンションにリノベーション。予想通りに問題頻発。

東京港区の大使館勤めの外交官専用の賃貸マンション家賃170万円/月などの、高級賃貸住宅もたくさん見てきましたが、そういう例外は置いておいて、一般論として賃貸用住宅の方が質が低く作られていることに異論は少ないと思います。団地しかり、4戸イチのプレハブしかり、平均的な分譲マンションに平均的な賃貸住宅が勝ることはないでしょう。

某大手賃貸物件で住戸の間の壁が上まで届いておらず、建築基準法に適合していない、という事件がありました。(1軒ずつ手直しをしていってますが、当時私がいた会社にも手直しを手伝って欲しいという依頼があり、現場を見る機会がありました)が、少なくとも私の周囲の現場関係者の反応は、「まあそんなこともあるやろな」ていどのものでした。賃貸なので。

 

12年前、西宮市の特殊な分譲マンションの不動産仲介をしました。2階建ての銀行の社宅を、不動産会社が買い取り、「分譲マンション」として売り出しました。私の前職場でも同様に、10階建ての商社の社宅を買い取り、全戸リノベーションの上、分譲マンションとして売り出しました。私が携わっただけでも他にも事例がありますので、そこまで珍しいケースではないのかも知れません。

この2つの事例には大きな違いがあります。

商社の社宅は10階建、総戸数も100近くあり、分譲マンションレベルの品質がありました。実際にすぐ横に建った分譲マンションと同時にほぼ同仕様で建てられていたという、かなり特殊事例だったこともあり、大枠として問題ありませんでした。(小枠としてはたくさんありました笑)ただ、社宅だけあって間取りのバリエーションが非常に乏しく、完売させるには非常に苦労しました。

銀行の社宅の方は2階建の階段マンション、総戸数10戸ていど。外壁塗装をし直すでもなく、社宅名のところをそれらしいマンション名に直し、スポットライトを当てただけ。内装は全て新品にやりかえてありましたが、相当無理がありました。

 

とは言え築年数は10年、80㎡の広さがあり、人気の駅から徒歩10分で2,600万円ていど。相場からすると激安物件だったため、即日完売に近いスピードで売り切りました。正直唖然とするほどすんなり完売しました。

私も一件ご購入いただきましたが、ご契約前にお客様から「何でこんなに安いんですか?」と問われたため、「建築について詳しくはないので確証は持てませんが、おそらく建物の質が分譲マンションと比べて低いからだと思います。照明とかタイル貼りなどの見栄えのところだけでなく、耐久性なども含め、かも知れません」「ただ、確認済書もあり、建築基準法に則って建てられてはいるので、違法建築とかそういう話ではありません」と答えました。幾分の不安は持ちながら、「相場として安い」後押しは強く、ご契約に至りました。その他のお客様も数組接点がありましたが、建物について質問があったという話は聞きませんでした。

果たして、と言っていいのか分かりませんが、10年後にお電話があり、外壁のクラックや漏水で大規模修繕にものすごくお金がかかっている、とのことで、管理組合の話の進め方のアドバイスを求められました。管理会社も入らず、自主管理のようでした。私のお客様は当時の私の話を覚えておられ、「あなたはそう言ってたから私としてはやっぱりな、なんだけど、他の住民は怒っちゃって…」と困惑の渦の中にいらっしゃいました。

分譲マンションでも漏水することはありますので、この一事例で十把ひとからげとするつもりはありませんが、「高額で売るために、長く住むことを目的に設計・施工をした家」作りと、「投資を目的に利回り優先でできるだけ安く作り、できるだけ高く貸すための家」作りが同じはずはない、ということなのだろうと思います。ちょっと賃貸を悪く言い過ぎかも知れませんが、建物を建てる目的が違うということは、結果が違うのは当然の話だと、私は思います。家庭料理とフランチャイズチェーンの料理、というか。

私は社会人になって尼崎市の塚口駅の駅直ぐのところのコンクリート打ちっ放しの賃貸マンションを借りたんですが、今思ってもそこは本当に良かったです。そんなに高い訳でもなかったんですが、住み込みのオーナーさんが管理されていて、いつもキレイで建物にひび割れとかも全然なく。松葉杖になったときは何度も食事を差し入れしていただいたり(苦笑)申し上げるまでもなく良い賃貸もあります。割合の問題ですね。

 

みんな意外と言わない“住み心地”の違い。

賃貸住宅と持ち家で一番違うのは住み心地です。前述「賃貸より分譲マンションの方が、建物の強度が高いことが圧倒的に多く、良いコミュニティを一緒に作ろうとしている住民が多い。そのような環境の整った賃貸物件に入るよりは買った方が毎月の支払いは安い」は、家族で住む住宅としては最も大事なポイントだと私は考えます。

住み心地を分解すると、

➀目に見える内装設備

②目に見えない部分の壁・天井などの構造の厚みや断熱性能

➂周囲に住んでいる住民

➃管理体制

といったところでしょうか。全ての建物が違うのを前提として、賃貸の場合、基本的に「入居してもらい、少しでも長く住んでもらうための最低限のラインを達成する」ことが目的なのが自然です。また、上記の通り建てた目的が違いますので、住民の入居の目的も違います。長期に、場合によっては一生を過ごす場所としてコミュニティの一員になったのか、1,2年間の仮住まいなのか。良好なコミュニティを築きやすい傾向にあるのが持ち家であることが自然です。

ごく一部の高級賃貸はさておき、一番大切な住み心地のところを考えたとき、持ち家に軍配が上がると思います。この点を抑えずに賃貸VS持ち家を語ると、目的が移動であれば、軽トラックでもベンツでもできる、という論評になりかねません。

 

昭和高度成長期から令和への変化。「みんな一緒に」から「それぞれ別々」に。

とは言え、2021年現在の家族形態はというと、単身、二人暮らし、3人以上がそれぞれ3分の1ずつだそうです。家族=夫婦+子供2人がモデルケースという話はとうに破綻していて、“住み心地が良い”の定義も大きく変わっています。飲み屋やカフェが周囲に林立する商業地、田畑に囲まれ自然の真ん中、東京・上海・マニラにワンルームマンション一部屋ずつ。どれも送る人生によっては住み心地が良い、となります。コロナを経てこの価値観がまた大きく揺らぎそうです。

持ち家がもたらす大きなリスクの一つは「縛られる」ことでしょう。転職しようにも家は移動しにくい、終身雇用が破綻しても35年ローンが残ると、回避の方法はありますが、「解約します」ですぐに出られる賃貸と比べると、根付いた分フットワークに劣ります。無いものねだりでしかありませんが、考えどころではあります。

 

住宅購入を機に迷いましょう。「あなたが出した答えが正解」が結論です。

「賃貸VS持ち家」以外にも「戸建VSマンション」「新築VS中古」「築浅VS築古+リノベーション」「オープンキッチンVSクローズキッチン」「駅近狭いVS駅遠い広い」「嫁VS姑」などなど、色んなVSがあります。「共働きVS専業主婦(夫)」「主業のみ頑張るVS副業もやる」、なども含め、この問いは全て生き方に対する問いです。

 

ここからは持論ですが、戦後すぐに生まれた私の親の世代は20代、30代、40代と生き方がある程度定義され、正解をもらい、ほとんど皆同じように生きることができました。人間無いものねだりなので、例えば親の時代を俯瞰してみても「生きやすい」ところも「生きにくい」ところもあったと想像します。

2021年の日本には、少なくとも1980年代よりは、生きていくロールモデルが無くなりました。結婚、子供、定職、持ち家と、80年代に当然のように周囲から求められたもの全てを持つ割合が、当時の3分の1くらいに減っている。その3分の1のうちの3分の1が離婚する。80年代で止まっているのは国の政策くらいでしょうか。

新聞などではよく「先行き不透明な時代」という表現を使いますが、いつも違和感を覚えます。そうでしょうか。普通の人が自分の意志でで切り拓いていくことができる時代になったのではないでしょうか。これはおそらく有史以来初めてのできごとだと思います。

戦後の半世紀が著しく不可思議な時代でした。ちなみにその前50年は「日本史に横たわる何か得体の知れない魔物のような…」時代であったと、司馬遼太郎氏は看破されています。20世紀全部が異質だったようです。とは言え、その前の歴史を振り返っても、住まいにも食事にも職業にも自己表現にも「全部自由だよ」と言われた状態だったことは無かったはず。これでジョブ採用、副業OKとなると、本当に全てセルフプロデュースを求められる時代になっていきます。しんどい人には本当にしんどいですね。

 

「賃貸VS持ち家」の答えは業界の識者が持っているのではなく、あなたとご家族の中にだけしかありませんので、大いに迷い、大いに議論し、価値観を擦り合わせる良い機会、まさしくチャンスです。そして例に漏れず正当はありませんので、「熟慮し、議論し、答えを出した」こと自体が人生の羅針盤になります。その結果として、持ち家を買って買い替えたときにものすごく損しようが、賃貸を選んで下の階の人がものすごくうるさかろうが、「自分で選んだ」ことについては後悔なく受け入れることができるのではないでしょうか。

そのあなたの答えを出すために、住宅についてもリテラシー=基本知識が必要です。微力ですが当HPが少しでもお役に立てれば幸いです。お読みいただきありがとうございました!

 

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リフォーム・リノベーション、不動産仲介業、注文住宅営業など、“一般顧客向けの”不動産業・建設業を20年提供してきました。営業、プランナー、デザイナー、現場監督と、幅広く網羅した仕事をしてきています。中古住宅流通+リノベーションの住宅の買い方をするに、せっかくなのでこれまでの経験を知っていただきたく、連載しているブログです。