こんばんわ。住宅のリフォームリノベーションを中心に色んな住まいをプロデュースしております、株式会社カラフルライフの清水 透です。
私は2021年4月に独立しました。その直後5月に着工、6月末に完成した、大阪北新地の和食料理店「吾味吾感」さんにて、
↑このような「タイルアート」を作りました。独立最初の仕事、という訳ではありませんが、個人的に記念になる仕事であり、かなり手間暇をかけて作りましたのと、「どうやって作ったん?」というご質問を多々いただくので、まとめておきます。お店全体についてはまた別途。
2021年6月27日掲載の読売新聞大阪版にも載りました:
包丁一本 新地で勝負 : ニュース : 大阪 : 地域 : 読売新聞オンライン (yomiuri.co.jp)
↑オンラインニュース
タイルアートの作り方
が本稿のテーマ。このやり方が正しいとは全く思いません(笑)次にやったらできるかすら分かりません。今回は、こうなっただけかもしれません。が、その中で残しておきたい、お伝えしたいのは、大きく分けてこの3つ:
➀料理長:杉本 透氏の作る創作和食料理を店舗の一角に表現したかった
②店名「吾味吾感」に込められた思いの表現
③内装を手掛けるものとしての、施主とのセッション
➃具体的なつくり方
お伝えしたい、根底の考え方からお話します。
食べたことの無い。でも奇をてらった訳でもない。初めて食べる斬新な創作和食
記事の通り、2020年から世界を席巻したコロナウィルスの影響で、勤務先の料理店が倒産。一からリスタートをするに当たり、慣れ親しんだ大阪・北新地の地で新規創業をすることになり、縁あって内装のお手伝いをさせていただくことになりました。もともとはリゾートトラストさんの京都、芦屋などの地で料理長として活躍されていた杉本氏。ちなみに独立開業しなくても、多くの料理店から引く手数多だったそうです。
直近まで包丁を振るった店舗は、
内装に8,000万円ほどかけた(!)、浮世離れした北新地の高級店。もちろん御贔屓のお客さんもたくさんいらっしゃいました。閉店が決まった中で、次の店舗の参考のためにと、お店のほぼ最後のお客としてお邪魔し、ふるまっていただきました。
私は全く美食家ではなく、食にお金を掛けることはありません。ですのでこちらの料理との比較対象を持ち合わせてないのですが、味はもちろん、器、演出含めて出てくるものが普通ではない。半端では無い。※写真は吾味吾感になってからのものです
「サンドウニッチ」お麩でウニをサンドしています。
「世界へ轟くポテトサラダ」ミシュランを見据えた逸品。鶉の卵、ベーコン、ポテトはもちろん、含まれる食材ひとつずつにこだわりが。
「フカヒレの揚げ出し」フカヒレの姿煮は数度食べたことがありますが、数段上。割った時にフカヒレが一本ずつ立ってます!フカヒレ以前に餡からしてモノが違います。この瓢箪型の器の演出がなお良し。
「クエの焼き物」クエって美味しいんですね(笑)上に乗っているのはナマコのハラワタ。これだけの量を取るのに大量のナマコを使うそうです。
美味しいものや昔から有名なお店での食事は、この歳になるとさすがに経験してきましたが、こちらはエンターテインメントそのもの。舌はもちろん、目も、鼻も、器を触れる手も、正しく五感が悦ぶ食事体験をさせてもらいました。専門的な話は全くできませんが、感動します。
これを表現する店舗を作りたい。作らないと失礼、負け、が私の中での第一歩でした。しかしながら、打ち合わせするも、肝心の杉本氏は「どんな空間でも大丈夫です…!」と、「空間の世話にはならねー」感を醸し出し(私が勝手にそう取っただけです(笑))、共同経営者さんも「すんごくかっこよく作ってね」という、野球で言えば「ホームラン」のサインを出すだけ(席数などは決めましたが)。予算設定も無く、「あんまり予算無いで」という追加サインだけいただき、実質どっぷりお任せいただきました。
こういう状態はこの仕事をする中では一番キツく、結果としては一番力が出ます。ただ結果は後から分ること。4月1日からスタートした打ち合わせは苦難そのものでした。
こんなものを作ってみたかった、ということを思い出した名古屋モザイクタイル大阪ショールーム
ビジネスモデルと同様、デザインも全くもって見たことが無いものは、少なくとも私には作れません。それは料理も同様だと思います。今回のネタ元は、
名古屋モザイクタイル、大阪ショールームさんの壁面タイルアート。以前から本当に素晴らしいといつも眺めていて、今回パクるに当たり、「すいません、パクらせてもらいますので写真採りますね」と断り、快く撮影させてもらいました。
こちらはおそらく全てホワイトのタイルのみでの構成。大判のところとお皿のところ、モザイクタイルの配置と、ところどころでしっかりずらしまくっている。AIにはできない、人の手を感じさせてくれるタイルアートだと思います。私の母校である、京都外国語大学のカフェに、なぜか岡本太郎さんが作った
タイルアートがあったのですが、何となく、それを思い出してもいました。
構想、などという大それたものではありませんが、どういうものにするか、手描きをします。
基本的にデザインというか、設計らしきものはこれだけ。現場にもこの紙を持っていきました。やるからには参考にさせていただいた名古屋モザイクタイルのタイルアートを超えたいですよね。

タイルを集めます。タイル屋さんにお願いして、余ったタイルをビール1ケースと交換したり、サンプルタイルを使ったり、ピンとくるものをバラ買いしたり。

悩んでいるあいだに、縁あって行った岐阜県にあるタイルミュージアムでインスピレーションをもらったりと、箸やお皿を大阪の道具屋筋商店街で買い揃えたりと、料理で言うところの仕込みの時間が1ヶ月ほどありました。正解が全然見えてこない、答えが分からない、吐き気をもよおす期間です。

店舗作り全般としても、この他のさまざまな難題を乗り越え、ようやくタイルアート本番。タイル貼りの工程は2日間。「今までやったことのない感じの仕事です」とタイル屋さんには事前にお伝えし、お越しいただきます。当日は、オープンするお店の料理長の料理の話、ミシュランを本気で狙っている話、単価2万円ほどの高級店である話など、目指すところの共有を、まずしました。
その上で、貼り方のルールとして、
①吾味吾感という店名から、基本的に5枚ワンセットとする②料理の味の深みをイメージし、できるだけタイルを2重3重と重ねて貼って欲しい③「創作和食」の一皿を出すお店の料理に負けないよう、見たことのないものを作る。遊び心を全開にして、「真面目に遊んで欲しい」
とお伝えしました。
この時点ではまだ心臓バックバク。「ほんとうにちゃんとしたものになるんだろうか…」と不安のみ。最悪の場合は全部壊し、普通のタイルを5㎡貼ってもらって、という想定も頭の中だけではしていました。
「ようこんな面倒なこと職人さんやってくれたな」と、言われましたが、今までこの類のことは何度かやってきているのですが、私の感触として、職人さんはこういった遊び心を発揮できる、唯一無二の仕事はお好きな方が多いと思います。今回のタイル屋さんも、私が思ってもないことをたくさんしてくださりましたし、2日目には「こういうタイルがあった方がオモロイから、倉庫から持ってきましたよ」と、嬉しい仕事をしてくださってます。
お任せした以上、細かい指示は無し。正直、「ああ、そこは縦にして欲しいな」「それはもうちょっと斜めがいいんじゃ…」という思いも施工中には多々ありました。が、完成したときには私が違和感を感じていたところが一番良かったりします。このような予定調和的でない仕事が、本当に仕事の醍醐味だなと、つくづく思います。私が正しい、良いと思ったものをそのまま形にすると、思った通りのものしかできません。想像以上のものを仕上げるには、施主の思い入れと、現場の奮闘・ハイテンションが欠かせないのは、どんな仕事でも同じだろうと思います。
仕上げに五味の表現として「甘・辛・塩・辛・旨」(※諸説あるようですがこれにしました)五感の表現として「口・耳・手・目・香」の10文字を散りばめます。この文字をステンレスで作ってもらおうと思いましたが、7,000円/枚するとのことで断念。木製なら500円/枚くらいで作れるサイトを探し、作成いただきました。
一番悩んだのは、左右の左官壁との間に、ステンレスの見切りを入れるか否か。現場監督交えた打ち合わせの結果、無しで。タイル屋さんとしては見切りがあった方がやりやすいし、そちらの方が普通かも知れませんが、そこは直感的に見切り無しを選びました。
塗装はスプレーガンにて。色は一度やりかえています。ちなみにこのお皿におかずが乗っているようなオブジェは、タイル屋さんの遊び。私などには考え付かないアイデアを出してくれました。
お店のテーマカラーが濃いネイビー、藍色であるため、日塗工の色品番でそれに一番近い色を選びました。が、一回目の↑の色では「青すぎる…」。塗装屋さんは指定の色で塗ってくれているため、私の選定ミスです。その場で打ち合わせし、倍近い黒を足してもらい調色。「黒に近い藍」を目指し、2度塗り。
リトライの甲斐あって、狙い通りの色へ。
イメージ通り、イメージを超えるものがあがりました。「吾味吾感」の文字は、施主さんのお知り合いの書家の作品を真鍮で作成したものです。上がってきた書の迫力がまた、大きな力になりました。
最後に、お店にも、またコロナで傷ついて、生まれ変わろうとしている世の中にも、「斜め前・上から、光が差し込むこと、右肩上がりの光を目指して上っていくこと」を祈り、グレアレスユニバーサルダウンライトを当てて、完成。思いを込めた壁面として、料理長と相対する位置に鎮座させました。
と、いう感じでタイルアートができあがった「吾味吾感」は、
大阪市北区曽根崎新地1-1-12 1階。詳しくはInstagramにて:
吾味吾感(@gomi_gokan) • Instagram写真と動画
お食事と共に、壁面が作る世界観を味わっていただけると、携わった者として幸せです。お読みいただきありがとうございました。








施工の際はお世話になりました
タイル屋ではなく、左官屋です(笑)
楽しい仕事させて頂き楽しかったですよ
左官 ナカガワ